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2006年の秋、私は一つのプランを暖めていた。それは、私が勤める大学で、ドイツ語を履修している学生達を対象に、ドイツ語学研修を行おうというものだった。語学をツールとして考えるならば、現在の日本においてドイツ語を学ぶ意味は殆どない。実際、私の勤める大学でも、ドイツ語を履修する学生の数は中国語のそれの10分の1に届かないのだ。「ドイツ語を勉強して何になる?」という問いに、詭弁を弄することなく答えを出すのは実は容易ではないのだ。このような状況下にあって、ドイツ語を学ぶためのモチベーションを少しでも高めるために、私はドイツ語学研修を計画したのである。ドイツでドイツ語を学ぶ、そのために準備をする。たとえ僅かな期間であってもそれは確かな意義を生み出してくれるだろう、そう私は考えたのだ。
そうと決まれば、段取りは決まってくる。どの町のどの語学学校を選択すれば良いのか?私は、いくつかの基準をもとに学校を探した。
まず、長いフライトやトランジットを避けたいので、フランクフルトに比較的近いこと。
次に、大都市を避け、なるべく小さな町であること。
さらに、治安の良い所であること。
そして、出来ればホームステイの斡旋の可能な学校であること。
最後に、日本人の観光ルートからははずれていること。
等である。
インターネットで情報を集めてみた。「お、いい所があるじゃないか。バンベルク?あまり聞いたことがないな。世界遺産?」その町にあるのが語学学校
“TREFFPUNKT” だった。早速Eメールで学校と連絡を取り、入学の手続きをとる。ただ視察するだけではなく、実際にコースに参加して見なければ良し悪しは分らないものだ。学校の対応は迅速で満足のいくものだった。事前に行うクラス分けテストの制限時間が3時間というのには驚かされたが、これもドイツ流か。
こうして私は、2007年の2月半ばから2週間のコースに参加したのである。フランクフルトからバンベルクまで、ICEとRBを乗り継いで約2時間半。丁度いい距離だ。バンベルクの駅から、学校のある旧市街まで楽に歩いて行ける。全ての観光スポットも徒歩圏内だ。人工8万に満たない小さな町ながら、決して何もない田舎ではない。二次大戦の戦禍を免れた旧市街には1000年を越える歴史を持つ大聖堂があり、市内には沢山のカフェ、レストラン、百貨店まである。キャンパスは広くはないが、大学もあり、学食も使える。とても2週間ではまわりきれない場所なのだ。治安も良かった。夜中の1時過ぎに酔っぱらいながら、街中を一人歩いたが、まるで不安はなかった。むしろ最近の日本の都会の方が数倍危険だろう。
語学学校“TREFFPUNKT”も非常に良かった。生徒数は最大でも40名ほどという小さな学校だが、それだけにアットホームであり、スタッフも実にフレンドリーだった。それだけではなく、授業の質を維持する努力が端々に感じられ、小さいながらも良く組織だてられていた。スタッフもただフレンドリーなだけではなく、熱意を持ち、それだけに厳しい所もあるので、その点はご注意を。このような学校の性格は、おそらく校長であるアレクサンドラの努力に因る所が大きいのだろう。こちらからの問いに対する彼女のレスポンスの良さは特筆ものである。
結論を言えば、バンベルクと”TREFFPUNKT”を選んで大正解だった。大都会には大都会なりの良さがあるだろう。それは否定しない。しかし、日本でそうであるように、小さな町の人々はよりフレンドリーだ。バンベルクの本屋のレジの女子店員は私に話しかけ、笑いかけてくれたが、フランクフルトの本屋の女子店員は、金額を確かめている私の手から札をひったくった。これは極端な例だが、危険や不快な思いをすることなく、人々と交流を図りたいなら、小さな町を選んでみてはどうだろうか。おそらく大学がある町ならば、語学学校はある筈だ。もちろんバンベルクと”TREFFPUNKT”なら期待を裏切られることはないだろう。2008年の2月、再び私は学生達とバンベルクを訪れる。20前後の彼らがドイツでの2週間でどのような体験をしてくれるのか、今からとても楽しみだ。おそらく生涯忘れることのない経験となるだろう。
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